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アフターレポート

2015年5月12日(火)、株式会社セミナーインフォ主催により、大阪市北区のコングレコンベンションセンターで「金融フォーラム2015 in OSAKA」が開催された。このフォーラムは、金融機関を対象に、業界を取り巻く環境の変化や規制の動向、成熟市場を生き抜くためのイノベーション等に関する付加価値の高い情報を提供するためのイベントであり、大阪では初めての開催となった。

今回は、「〜新たな規制への対応とマーケティング&IT革新〜」をテーマに、全6セッションが開かれた。まず基調講演として、金融庁監督局審議官の西田直樹氏が登壇。「地域金融機関に期待される役割」と題して、地域経済活性化支援機構の機能や取組み状況、経営者保証に関するガイドラインの策定の背景・目的及び概要などについて解説した。

これを受けて、4つのセッションが行われ、最後に、日本銀行金融機構局審議役(金融高度化センター長)の岩下直行氏により、「ITによる金融高度化と地域金融機関経営」と題して特別講演が行われた。
【基調講演】

地域金融機関に期待される役割

金融庁 監督局 審議官 西田 直樹 氏
西田直樹氏 まず、「地域金融機関に期待される役割」と題して、金融庁監督局審議官 西田直樹氏による基調講演が行われた。

西田氏は、まず「『日本再興戦略』改訂2014」において、地域活性化・地域構造改革の実現等のために新たに講ずべき具体的施策として、「地域金融機関による事業性を評価する融資の促進」について触れた後、「平成26事務年度 金融モニタリング基本方針」の概要を説明。

顧客ニーズに応える経営など9つの重点施策を示し、地域金融機関に対して、企業の事業性評価と解決策の提案・実行の支援、特に事業性評価を重視した融資やコンサルティング機能を発揮することが課題となっていることを述べた。

次に、昨年12月に閣議決定された「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げられた施策について説明。

金融等による「地域企業応援パッケージ」を策定し、産業・金融両面からの政府の支援等を総合的に実施し、様々なライフステージにある企業の課題解決に向けた自主的な取組を官民一体で支援すること、また、埋もれている地域資源を活用した事業化の促進など金融庁関連の施策について紹介した。

また、「地域経済活性化支援機構」による地域金融機関等と連携した取組を紹介。「経営者保証に関するガイドライン」を策定した背景や目的、概要を説明。監督指針の改正のポイントについても説明した。

最後に、金融機関等により広く実践されることが望ましい事例集を公表しており、ガイドラインが融資慣行として浸透・定着していくことを期待していると述べた。

地域金融機関による取引先海外進出支援の方策〜共同駐在員事務所の可能性も含めて〜

岩田合同法律事務所 弁護士 松田 貴男 氏
岩田合同法律事務所 弁護士 工藤 良平 氏
松田貴男氏、工藤良平氏 「地域金融機関による取引先海外進出支援の方策〜共同駐在員事務所の可能性も含めて〜」と題して、岩田合同法律事務所 弁護士 松田貴男氏、弁護士 工藤良平氏が報告した。

まず、海外進出を行う取引先に対する融資現場での実例を紹介しながら、取引機会損失の観点と既存の与信先に対する債権管理・リスク管理の観点から問題点を指摘。海外進出を行う取引先に対する金融面・情報面等でのサービス提供の方策について、海外現地に拠点を設けなくとも可能な方策と、海外現地に拠点(支店・駐在員事務所)を設立して行う方策を挙げた。

海外現地に拠点を設けなくても可能な方策として、取引先の海外子会社への直接貸付、海外現地銀行との業務提携、政府系金融機関・メガバンクとの連携について説明。海外向け直接貸付について、英文貸付契約自体に対する不慣れや、現地強行法規の確認は不可欠といった留意点を上げた。

また、海外現地に拠点を設立する際、支店・現地法人設立の場合と駐在員事務所設立の場合のそれぞれの注意点についても解説した。

最後に、第3の方法として、複数金融機関が共同で拠点(駐在員事務所)を設立する方法について、いくつかのスキームを紹介。

現実的に利用可能性・実現可能性があるスキームとして、海外に一つの金融機関が代表として駐在員事務所を設立の上、他の金融機関は従業員を出向させる形で海外現地の駐在員事務所に派遣する方法と、海外に各行が駐在員事務所を設立の上、近接した区画にオフィスを賃借し、事務サービス等に係わる費用負担をシェアする方法について、それぞれのメリットと注意点を述べた。

経営に貢献できる内部監査〜内部監査に対する期待を踏まえた態勢整備のポイント〜

有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ
シニアマネジャー 奥谷 信之 氏
奥谷信之氏 「経営に貢献できる内部監査〜内部監査に対する期待を踏まえた態勢整備のポイント〜」と題して、有限責任監査法人トーマツ金融インダストリーグループシニアマネジャーの奥谷信之氏が報告した。

奥谷氏は最初に、内部監査高度化についての重要ポイントと、経営陣と内部監査部門の関係について確認。経営陣の内部監査部門に対する期待について、経営目線での内部監査、組織のリスクと改善すべき課題についての簡潔明瞭な報告、フォワードルッキングな内部監査であるとポイントを挙げた。

次に、経営目線での内部監査について、経営陣の監査ニーズを勘案するためのリスク・アセスメント手法や、経営陣の監査ニーズを内部監査計画に反映するための工夫、内部監査領域の段階的発展のイメージ、戦略策定プロセス監査の着眼点について解説。

続いて、内部監査結果報告書、指摘表、監査調書を記載する上でのポイントに触れた後、フォワード・ルッキング・アプローチと予防監査、内部監査の高度化と人材育成の関係や個人別評価サマリー表、部門・チーム評価サマリー表などの実例を示した。

最後に、内部監査体制の高度化の観点から品質評価等の意義や、調査対象項目と主な確認ポイントも紹介した。

反社会的勢力排除における問題事例の検討

弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー弁護士 中光 弘 氏
弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー弁護士 古川 純平 氏
中光弘氏、古川純平氏 続いて、「反社会的勢力排除における問題事例の検討」と題して、弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー弁護士 中光弘氏、パートナー弁護士の古川純平氏が報告した。

最初に、預金規定の暴力団排除条項の遡及適用の可否について、預金の法的性質(消費寄託)からのアプローチと約款論の検討課題を挙げて、暴力団排除状況の必要性・相当性が認められる以上、訴求適用が不定されることにはならない(但し、変更内容の周知は必要)だと述べた。

次に、個人情報保護法に基づく、反社会的勢力該当性にかかる情報の開示請求への対応についても言及。裁判例や金融分野における個人情報保護に関するガイドラインを示しながら、結論としては、反社会的勢力情報は個人データに含まれず、グレー情報についても、基本的には含まれないと解されるが、対象が広くなりすぎないように留意が必要だと述べた。

最後に、任意売却の諸問題を取り上げた。買主が反社会的勢力の事例では、仮に売却価格が公正な価格であるとしても、原則的に避けるべきであるが、事案によっては認めてもよいケースもあると説明。売主が反社会的勢力の事例では、価格の公正性の担保、資金使途等によっては売却が認められる事例も想定されるが、個別事案毎の判断は困難であるとして、一律にかかる取引は行わないという判断も合理性があると述べた。

また、仲介業者が反社会的勢力の事例では、事例によっては取引当日に仲介業者が代わり、担当者のその場での判断が難しいという場面があり、取引の条件として、仲介業者を含めた当事者や金額等が変更になれば、再度検討をやり直すことになるため、当日に決済はできない旨を予め伝える取扱いとすることが有益であると述べた。

インフラ・エネルギーファイナンス法務の最先端

長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 本田 圭 氏
長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 勝山 輝一 氏
本田圭氏、勝山輝一氏 続いて、「インフラ・エネルギーファイナンス法務の最先端」と題して、長島・大野・常松法律事務所 パートナー弁護士 本田圭氏、パートナー弁護士の勝山輝一氏が報告した。

まずは、空港、上下水道、有料道路等などのインフラファイナンスの現状及び留意点について解説。コンセッション型PFIの概要や基本ストラクチャー、公共施設等運営権について説明し、コンセッションの対象となる施設を紹介した。

また、具体的な事案として空港を例に、入口(業務開始時)と業務期間中、出口(業務終了時)の問題点について検討した。

次に、エネルギーファイナンスの最新の法的論点について解説。火力発電プロジェクトのスキームを紹介した後、そのプロジェクト関連契約について、売買契約のオフテイクリスク、PPAの留意点、IPP入札案件標準契約について留意点を説明した。

また、EPC契約とO&M契約、燃料供給契約のリスクや留意点についても紹介した。また、ファイナンス関連契約の留意点やセキュリティパッケージについても説明した。

最後に、再生可能エネルギー発電プロジェクトにおける留意点について解説。再生エネルギー全量買取制度の概要や調達価格の決定時期、設備認定に係わる最近の変更、出力抑制ルールの変更内容について説明。

また、活性化が見込まれる上場インフラファンドに触れた後、既存再生エネルギー案件買取の留意点として、再生エネルギー案件DD(デューディリジェンス)のポイント、設備認定及び系統連携、事業用地の確保(地上権とすべきか、賃借権とすべきか)、土地賃貸借経営のポイントや屋根置き事業の留意点を説明。DDの際の関連法政の確認やミニアセス問題についても説明した。
【特別講演】

ITによる金融高度化と地域金融機関経営

日本銀行金融機構局 審議役(金融高度化センター長) 岩下 直行 氏
岩下直行氏 最後に、「ITによる金融高度化と地域金融機関経営」と題して、日本銀行金融機構局審議役(金融高度化センター長)の岩下直行氏による特別講演が行われた。

まず、金融機関のシステムは、堅牢性や高度な可用性を誇る反面、柔軟性に乏しく、現場のニーズの変化に迅速に対応できずに、むしろ改革を阻害する一因となっているのではないかという指摘を紹介し、銀行の経営課題を効率的かつスピーディに解決していくためにも、金融ITの変革が必要であると述べた。

次に、情報技術の発展に伴って、決済システムを含む様々なシステムが相互に連動することを前提に、銀行システムの基本設計を考え直す必要が生じていることを指摘。電子商取引(EC)における資金決済は、当初から金融EDI的な性格を持っていたこと、最近のリテール決済のイノベーションは、主としてノンバンクが担う領域から発生していることも説明した。

続いて、金融業界においてビッグデータを考える視点として、ビッグデータで儲けるビジネスモデルがあるか、データ収集のコストが低いかなど、5つの議論を紹介。金融機関のビッグデータ利用事例を3つに類型化して説明した後、個人情報、パーソナル情報、プライバシーの関係について新しい問題が生じる可能性にも触れた。

最後に、これからの地域金融機関のIT活用のあり方について説明。コンピュータの発展により、今後なくなる職種やなくならない職種、雇用者数の分布などのデータを見ながら、金融業界は変化によるリスク拡大を警戒し、現状を維持したいという力が働きがちであるが、ITが金融に大きな変化を迫る状況になった場合に備えるためにも、未来に向けた前向きな取り組みが必要だと述べた。
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