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アフターレポート

株式会社セミナーインフォ主催による金融機関のための最新情報イベント「金融フォーラム2012」が、2012年5月25日(金)東京・千代田区のベルサール神田で開催された。このフォーラムは、金融機関の経営環境変化を的確に捉え、セミナーを通じた情報提供を目的に今年初めて開かれるもので、今後年1回継続的に開催される予定だ。

第1回目の今回は「金融機関のイノベーション〜顧客重視の経営と収益力強化の源泉〜」を統一テーマに、全21のセッションがA、B、C、Dのセミナー会場で並列的に行われた。参加申込件数は2千4百件を超え、各セッション会場で講師の話に熱心に耳を傾けるたくさんの受講者の姿が見られた。

今回のフォーラムでは、まず基調講演として金融庁監督局総務課長の長谷川靖氏が登壇。「金融監督行政の諸課題」と題して、主に銀行行政のさまざまな課題について解説した。これを受けて、セミナー会場A・B・C・Dにおいて、RegulationやRisk management、IT & SecurityやIT/Marketingについて20のセッションが行われた。

金融フォーラム2011

金融庁による基調講演

金融庁・長谷川氏による基調講演の模様は
サブ会場でもライブ中継された

当日はまず、 「金融監督行政の諸課題」 と題して金融庁 監督局 総務課長 長谷川靖氏が基調講演を行なった。

長谷川氏は、冒頭で金融監督行政の目的について、金融システムの安定(信用秩序の維持)、顧客・利用者保護、金融の円滑化(金融仲介機能の発揮)にあり、その時々に応じて重点を移してきたが、究極の目的は国民経済の健全な発展に資することにあり、今後もそこに軸足を置いて監督していくことを述べた。

金融システムの安定関連では、リーマンショックを踏まえたリスク管理の高度化のため、マクロプルーデンスの視点に基づく監督、VaR等の定量的なリスク管理の限界とストレステストの重要性について、また、国際的な金融改革(バーゼル3)への対応として財務基盤の強化について説明した。顧客・利用者保護に関しては、業務の継続性の確保、顧客への説明体制の充実、リスク性商品に係わる適合性の原則について言及した。

金融の円滑化に関しては、特に東日本大震災に対して、どのような金融上の措置をとってきたかを説明。金融業界の取り組みも紹介した。また、金融機能強化法の改正(震災特例)の概要についても説明。二重債務問題への対応について、個人向けの私的整理ガイドラインの概要や、産業復興機構と産業復興相談センターの2つの債権買取機構が連携して買い取りを行うことなどを説明した。

最後に今後の取り組みとして、金融円滑法の出口戦略と中小企業再生の枠組みについて図示して解説。エクィティ性資金(DES/DDS)や我が国初となる動産担保融資(ABL)、個人連帯保証に関する監督指針の改正についても説明した。また、中小企業のアジア進出をどのような体制で支援するかについても触れた。

反社会的勢力対応の実務に関するケーススタディと10の処方箋

基調講演に続いて、4つのセミナー会場で各セッションが開かれた。会場Aでは「反社会的勢力対応の実務に関するケーススタディと10の処方箋」と題して、弁護士法人中央総合法律事務所 パートナー 弁護士 錦野裕宗氏とアソシエイト 弁護士 中村健三氏が報告した。

まずは、反社会的勢力とは何かについて説明。反社会的勢力の属性要件や行為要件、活動の特徴を述べ、また、反社会的勢力への対応についての社会的動向や、全銀協や証券業界、生保協会、損保協会で推進している対策を紹介。暴力団排除条例における利益供与の禁止についても説明を加えた。

その後、金融機関担当者にとって実務上想定される実例をケーススタディとして紹介。「融資申込の場面」「管理回収の場面」「預金開設の場面」「預金解約の場面」「保証人が反社会的勢力である場合」「反社会的勢力の認定」「反社会的勢力の情報」「任意売却」「貸金庫」「不当要求への対応」といった10のケースを取り上げ、それぞれどのような対応方法をとれば良いか、実効的な処方箋について解説した。

本邦金融機関が留意すべき金融規制改革

会場Aでは続いて、「本邦金融機関が留意すべき金融規制改革」と題して、新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 プリンシパル 和合谷與志雄氏、エグゼクティブディレクター小石原英勝氏が報告した。

まず、我が国金融機関の国際業務拡大への課題について整理した後、金融規制改革の動向と邦銀への影響について説明。バーゼルVテキストを踏まえ、金融庁より発表された告示改正案は、適用範囲や対象金融機関が限定的であると指摘。その後、自己資本開示要件の定義や、OTCデリバティブ規制における外国銀行の取扱いと域外適用問題について説明。

また、米国における外国銀行が検討すべき事項として、自己勘定取引と対象勘定取引への投資業務(ボルカールール)や、英国規制の本邦金融機関への影響、国内でのOTCデリバティブ取引規制改革などについて解説。G20カンヌ・サミットや、G-SIFlsの規制強化のための関連公表ガイドライン、FSBとBCBS規制対応スケジュールにも言及した。

最後に、バーゼルV規制に対する業務対応上のポイントを解説。自己資本比率や流動性比率計算など、システムの導入・更改も含めた、十分な準備・対応を行うべき領域が存在すると指摘。流動性規制に関連したシステム更改の方向性も示した。

金融機関の外部委託管理に関する態勢整備上の留意点

この後、「金融機関の外部委託管理に関する態勢整備上の留意点」と題して、東京国際コンサルティング株式会社 代表取締役 青木茂幸氏が、外部委託・代理業務の態勢整備上の着眼点や効果的な対応策等について報告した。

青木氏は、外部委託先・代理店等に対して検査が強化されている背景として、免許(登録)成果での業務分解化が進展し、委託に伴い新しいタイプの問題が発生していることを上げ、委託先・代理店等の管理体制の脆弱性が改めて認識されていると指摘した。

業務委託契約上で明確にしておくポイントとして、協力義務範囲の特定、連絡・報告事項、顧客情報管理、直接または共同の監査権限の明確化を挙げ、また、日常的なコミュニケーションプロセスの確率・維持が管理の中核といっても過言ではないと述べた。

さらに、委託先・代理店役職員に対する教育トレーニング内容の確認や、委託元の金融機関による直接トレーニングの実施の必要性も指摘。コンプライアンス部門の日常的な情報収集ルートの確立や、委託先等に対する監査が重要だと述べた。

収益力強化に活かす規制対応

続いて、「収益力強化に活かす規制対応」と題して、デロイト トーマツ コンサルティング株式会社 パートナー 中鉢友則氏、シニアマネジャー 家永和宏氏、シニアマネジャー 武元亮氏が報告した。

まずは、金融機関に対する規制・法令の多様化が進む中で、個別対応では限界があるとして、必要な情報、態勢をフレームワークで捉え、設計することが重要であることを指摘した。

そして、規制強化・法令遵守への対応という「守り」を「攻め」に活用するためのポイントについて、攻めと守りの態勢構築は両立しうるとした上で、非与信先の属性情報更新がカギになると指摘。

モニタリングシナリオを厳選すること、要件変更に対処しうるループを確立することの必要性などについて説明したほか、IT調達の適正化に向けた論点と取り組み例等も紹介した。

最後に、経営資源の有効活用に向けた効果的なアプローチとして、情報管理を軸とした一連のプログラムとして取り組むこと、情報の「同期化」を目指し、既存資産を有効活用すること、データ統合ではなく情報融合を目指すこと、ガバナンスとコミュニケーションの強化などについて解説した。

金融商品の販売に関する法規制

会場Aの最後のセッションでは、「金融商品の販売に関する法規制」と題して、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 森下国彦氏、アソシエイト 弁護士 渋谷武宏氏が報告した。

最初に、金融商品に関する裁判例・ADR・行政処分の事例として、投資信託、株式の民事裁判例、行政処分例を紹介し、債券(仕組債)、デリバティブ取引の説明義務違反の事例を紹介。その上で監督指針の改正概要を説明した。

また、商品販売後のアフターケアが問題となった事例として、監督方針における位置付けや民事裁判例を紹介。ADRにおける高齢者の問題にも触れた。

最後に、他の事例から得られる教訓として、適合性原則・説明義務をいかに運用するか、事例から抽出される判断要素を紹介。高齢者の判断能力の着眼点についても言及した。

ビッグデータ時代のリスク管理

基調講演に続いて、会場BでもRegulationやRisk managementに関する5つのセッションが開かれた。まず「ビッグデータ時代のリスク管理」と題して、有限責任監査法人トーマツ パートナー 桑原大祐氏、シニアマネジャー 服部邦洋氏によりアナリティクスアプローチを活用した金融機関戦略についての報告が行われた。

テーマは、金融機関においてビッグデータと分析をどのように活用すべきか、そして、意思決定の質をどのように高められるか。ビッグデータ時代のスマート・リスクとアナリティクスについて解説した後、アナリティクスは企業のあらゆる部門での意思決定に活用できるとして、顧客セグメンテーション事例や内部監査リスクアセスメント事例、テキストマイニング事例を紹介した。

また、フォワードルッキングなリスク管理とデータアナリティクスとして、与信判断の高度化やストレステストの事例を紹介。最後に、アナリティクス・カルチャーを浸透させるには、どんな壁を乗り越えれば良いかについても説明した。

FICORスコアを活用した個人融資戦略の推進

この後、「FICO®スコアを活用した個人融資戦略の推進」と題して、フェア・アイザック日本支社 カントリーマネージャー 村元洋氏による報告が行われた。

村元氏は、まず米国で利用される信用情報スコアの代名詞となっているFICO®スコアについて、その特徴とメリットを紹介。広範囲なリスク評価ができ、高い汎用性があること、短期間に導入可能であることを説明した。

また、FICO®スコア活用のベストプラクティスとして、他の予測情報を組み合わせて各情報の貢献度を増強したり、各ポートフォリオに置いてFICO®スコア別の相対的なパフォーマンス評価ができること、そして、スコアのパフォーマンスを時系列でモニタリングでき、未確定要素が大きい場合は対象実験を監視下で試行できることなどをアピール。

デュアルスコアによる機会拡大、口座管理、ポートフォリオ管理に活用できることを紹介し、最後に世界での導入実績や導入に際してのソフトウエア構成を説明、いくつかのケーススタディも紹介した。

規制、システム、海外拠点等に係るオペリスク管理の統合化、効率化

続いて、「規制、システム、海外拠点等に係るオペリスク管理の統合化、効率化」と題して、新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 シニアパートナー 森本親治氏が報告した。

森本氏は、GRC(ガバナンス・リスク・コンプライアンス)による統合的リスク管理の必要性とともに、GRCの各視点について金融機関が直面している課題を整理。組織構造と各部門の機能から見た、リスク管理の統合化の要点を図示し、アプローチの推進策として欧米大手企業を中心にGRSツールの導入が進展していると述べた。

次に、具体的なリスク管理実務でのGRCツール活用事例を紹介。規制対応において関連法令・規制類の整理及び一元管理する仕組みを構築し、最適化することが可能であること、また、オペリスク関連業務において対応事項の重複を整理し、信頼性向上を図れることなどについて説明、さらに、CSAの効率化・高度化の具体例を紹介した。

フレームワークからフットワークのBCPへ

この後、「フレームワークからフットワークのBCPへ」と題して、アーンスト・アンド・ヤング・ソリューションズ株式会社 取締役COO 池田悦博氏、エグゼクティブ・ディレクター 宮原潤氏が報告した。

同セッションでは、まず東日本大震災を振り返り、震災により判明したBCP(事業継続計画)の主な課題を挙げ、想定外のリスクへの対応として何が重要かを説明。ただ、あまりにも厳しすぎる想定は非現実的であり、まずは想定しうる範囲でBCPの作成・管理を十分に行うことが重要だと指摘した。

BCPに関して特に考慮すべきポイントとして、@リスクシナリオの設定、A業務影響度分析(BIA)、BBCPの維持管理、CBCP文書体系について説明。その上で、新しいBCPの考え方であるフットワーク型BCPを提案。同社が考えるBCP策定・運用では、シンプルかつ網羅的、そして、コミュニケーションと「人」を重視することがポイントになることを説明した。

IFRS金融商品会計の動向と今後の対応

会場Bの最後のセッションは、「IFRS金融商品会計の動向と今後の対応」と題して、新日鉄ソリューションズ株式会社 金融ソリューション事業本部 情報系ソリューション事業部 主席コンサルタント 漆沢昭光氏が報告した。

漆沢氏は、最初に同社の金融業務ソリューション概略とALM、リスク・収益管理の高度化対応としてのNSSOL経営管理系ソリューションシステム導入の実績、金融機関における国際会計基準(IFRS)対応の実績を紹介。次に、国際会計基準(IFRS)に関わる最近の動向や、日本におけるIFRS適用をめぐる最近の動向を報告した。

それらを踏まえて、IFRS適用プロジェクトの立案に向けて、計画の策定から会計方針書の作成、実際のIFRS対応、運用の定着化までフェーズ毎に説明しながら、同社のIFRS金融商品会計パッケージを紹介。最後に、IFAS対応システム導入のための事前検討タスクや決算業務効率化についても説明した。

金融機関におけるビッグデータ分析

基調講演に続いて、会場Cでは、IT & SecurityやIT/Marketingに関する5つのセッションが行われた。まず、「金融機関におけるビッグデータ分析」と題して日本アイ・ビー・エム株式会社 金融インダストリー・ソリューション ソリューション企画・推進担当 野村尚氏が報告した。

野村氏は、IBMの調査をもとに、経済環境が複雑化する中で、高業績企業はその対応ができていると報告。高業績企業のCEOが関心を寄せている3つの領域として、@組織に創造性を発揮させるリーダーシップ、Aオペレーションに「巧さ」を追求する、A顧客接点を新たな発想で作り変える、を挙げた。

その上で、顧客接点を革新するためには「データの死角」を排除することが必要であり、企業によってその能力格差が広がっていると説明。「データの死角」を排除するための視点の転換は「ビッグデータの分析」によって現実味を持ち、「ビッグデータの分析」はビジネスを一変させる可能性を秘めているとした。

その後、Twitterや企業サイトなど、ソーシャルメディア上のビッグデータを分析しているカブドットコム証券の事例を取り上げてIBMの取り組みを紹介。新しい視点によるビッグデータの活用の可能性について解説した。

金融機関におけるモバイル時代のIT資産管理成功の秘訣

続いて、LANDesk Software株式会社 営業技術部長 山田伸吉氏が「金融機関におけるモバイル時代のIT資産管理成功の秘訣」と題して報告した。

山田氏は、スマートフォンやタブレット端末などモバイルデバイスを導入する企業が増えている中で、パソコンと同様の管理の必要性が生まれていることを説明。MDM導入にあたって熟慮すべき点として、MDM対応の3つの機能−社員が持ち込むデバイスなど未許可のデバイスへの対応、デバイス構成やセキュリティ設定の管理、問題が発生したときのリモート管理について説明。

また、モバイルデバイスの利用が伸びていく中で、現状の工数が増大するのを避けるために、PC資産管理からマルチデバイス資産管理へ、IT資産管理を一元化することの重要性について解説。これにより資産管理を最適化し、MDM特有の工数は最小化し、ユーザ単位での細やかな管理やMDMに特化した機能をカバーできることを説明した。

ルールエンジンを活用した審査業務の効率化

この後、「ルールエンジンを活用した審査業務の効率化」と題して、フェア・アイザック日本支社 シニアコンサルタント 阿部章裕氏が報告した。

阿部氏は、同社の会社概要や同社が提供するソリューションを紹介した後、ビジネスルールとは何か、企業の意思決定メカニズムに関する課題から、どんな企業がビジネスルールエンジンを必要とするかを説明。そのメリットや従来のシステム開発手法との違いも解説した。

その上で、金融機関の審査業務におけるビジネスルールの活用方法を提案。同社の提供するビジネスルールエンジン「Blaze Advisor」を導入することで、どのような効果が得られるかを説明。最後に「Blaze Advisor」を活用している日本や海外の実績を紹介した。

成果をあげるユーザ中心ウェブサイト戦略

続いて、株式会社ビービット 取締役 武井由紀子氏が「成果をあげるユーザ中心ウェブサイト戦略」について報告した。

武井氏は、同社の会社概要や主なクライアントを紹介した後、金融業界のウエブチャンネルの状況を紹介。理想と現実の狭間で、マネジメントも現場も思考や行動が止まっているのではと指摘した。

その中で効果を上げた事例として、都市銀行の住宅ローンサイトを取り上げ、リニューアル後に住宅ローンの診断サービス申込数が10倍になった例を報告。その他の金融機関の事例も紹介し、ユーザ中心のアプローチの重要性を述べた。

次になぜユーザ中心主義なのかを説明。市場が成熟化し、セルフサービスチャネルというインターネットの特性や企業から消費者へとパワーシフトする中で、ユーザ分析の徹底が不可欠とした。

その後で、成果を上げるためのユーザ中心アプローチの実践手法を紹介。

@何をゴールとするか(成果の明確化<出口>)、A誰を狙うのか(ユーザターゲティング<入り口>、B何を伝えて、どう導くか?(コミュニケーションシナリオ<コンテンツクリエイティブ>、Cユーザ調査による精緻化、などステップ毎に、同社が実践を重ねてきた独自の方法論について具体例を用いてわかりやすく解説した。

営業力(質×量)の抜本的強化を創出する統合クラウドサービス

会場Cの最後のセッションは、「営業力(質×量)の抜本的強化を創出する統合クラウドサービス」と題して、フューチャーアーキテクト株式会社 ファイナンシャル事業部 エグゼクティブマネジャー 渡邉浩史氏が報告した。

同社の事業概要と特長及び金業界での取り組みを紹介した後、渡邉氏は、地域金融機関の置かれている外部・内部環境と営業現場の事態について報告。

量(営業時間)を増やすための施策と質(営業品質)を向上させるための施策、持続的な効果を享受するための施策として、検証と改善のサイクルを“仕組化”することが必要だと説明。同社が考える「渉外・融資業務プロセスのあるべき姿」を図示した。

その後、このコンセプトを具現化したソリューションとして、同社のクラウドサービス「SKYBANK」を紹介。「SKYBANK」でカバーする広範囲な銀行業務とコアサービスの概要を説明した後、実際に動作する画面を見せながらデモンストレーションを行った。

また、必要なセキュリティ対策の説明も加えた後、ランニングを含めたコスト削減の実現可能性についても説明した。

グローバル経済時代のメディア活用

基調講演の後、会場Dでは、主にMarketing & Global Marketについて5つのセッションが行われた。最初に、「グローバル経済時代のメディア活用」と題して、ダウ・ジョーンズ・ジャパン株式会社 ダウ・ジョーンズ経済通信 日本語サービス編集長 三輪弘氏、カスタマー・セグメント・ディレクター ケビン・ダン氏が報告した。

まず、130年の歴史を持つダウ・ジョーンズの概要や、日本におけるダウ・ジョーンズ、ダウ・ジョーンズ経済通信についての紹介、ニュースサービスの概要、ソリューションに特化したサービスやデータベースとしての情報サービスなどを紹介した。

その後、三輪氏がギリシャ危機を例に、重層的な関係を深める世界経済について、サプライチェーン(供給網)、財政健全化、行き詰まる政治、格付け会社のリスク評価、金融規制強化、金融緩和政策の限界、格差拡大などのキーワードで説明。

また、世界経済の見通しについて、さまざまな資料を提示しながら欧州経済の見通しに基づく世界経済の今後を概観。世界的成長は鈍化しながらも継続し、そこにおいて中国を中心とした新興国の主導は変わらないこと、しかしながら不安定要素を抱えており、新たなショックも起こりうることを解説した。

大マーケティング時代の幕開け

続いて、「大マーケティング時代の幕開け」と題して、株式会社エム・セオリー 代表取締役 栃本克之氏が報告した。

栃本氏は、消費者ニーズが多様化・細分化している中で、最適な商品・サービスを最適なチャネルで最適なメッセージと共にターゲットに届けることが必要だと説明。

データ・ボリュームが増大し、データ・スコープが拡大する中で、携帯GPS、SNS、POSデータとの連結により、データ解析のステージが進化し、マーケティング効率を格段に向上させると述べ、その販促の例を紹介した。

また、消費者理解の方法としてS-Rモデルによる効果事例やS-O-Rモデルの利点を紹介。2つを組み合わせることで大きな相乗効果が見込まれると述べた。

次に、マーケティングのあり方が根本的に変化する中で、実は金融機関は重要な情報を握っており、今後キープレーヤーとなる公算が高いことを説明。現在保有するデータ・ボリューム、データ・スコープで何ができるか、金融機関としてのマーケティングだけでなく、消費市場全体に対してマーケティング効率を向上するようなビジネスをいかに展開しうるか、勝ち残るための戦略が重要だと解説。最後に、これからのマーケティング体系、組織・管理・運営のあるべき姿についても説明した。

金融サービスのブランド・マーケティング戦略

この後、株式会社博報堂コンサルティング 執行役員 吉田 芳弘 氏、プロジェクトマネジャー 本庄 加代子 氏が、「金融サービスのブランド・マーケティング戦略」について報告した。

同社の概要とサービス内容を紹介した後、ブランドとは何か、金融サービス市場で果たす役割について説明。強いブランドとは何か、そのお客様にもたらす効果を述べ、ブランドは企業と顧客の絆であるとして、選ばれる金融機関になるにはブランディグが有効だと述べた。

次に、金融サービス市場と生活者意識について説明。顧客「選」略を起点に具体的な戦略に落とし込むことが重要だとした。

その上で、新しいマーケティングの潮流として、キーワードは“社会性=ソーシャル”と指摘し、ソーシャルメディアによるマーケティングのインパクトについて解説。

社会に対峙するぶれない姿勢と、ブランド価値の再考、きめ細やかなコミュニケーションマネジメント、すなわちストーリーブランディングが求められていると述べた。最後に、ストーリーブランディングの作り方のポイントを紹介した。

金融機関に求められる新しい顧客接点の創造

続いて、「金融機関に求められる新しい顧客接点の創造」と題して、ベイン・アンド・カンパニー パートナー 金融プラクティスグループリーダー 長谷部智也氏が、ライト・リテール時代の本格到来について報告した。

長谷部氏は、邦銀各行は、収益性の問題と限界的な差別化という共通の課題を抱えているが、同社がこれまで銀行とプロジェクトを実行してきた経験から、自行で改善できる余地が相応に存在すると説明。店舗戦略の構築と実践でも同様であり、投資対効果を最大化して、他行にはないユニークな顧客体験を提供する店舗ネットワークの構築という面でも知恵を絞れる機会は大きいと述べた。

その上で、店舗戦略の重要性と既存の店舗ネットワークに内在する事業機会について確認。店舗戦略構築の観点から特に重要になる、最大の投資効果を実現するための既存店舗ワークの再構築の考え方と、ライト・リテール店舗を活用した店舗展開の実践について、同社の考え方と具体的な分析アプローチ、検討事例を紹介した。

さらに、店舗戦略全体を高度化する観点から、チャネル戦略を起点とした顧客ロイヤルティの醸成に向けた考え方についても説明した。

SNS/スマートデバイスに向き合う

会場Dの最後のセッションでは、株式会社ベルシステム24 マーケティング戦略本部 新規事業開発部 事業開発グループ グループマネージャー 濟木基成氏が、「SNS/スマートデバイスに向き合う」と題して報告した。

濟木氏は、同社が金融機関各社の顧客接点をサポートするコンタクトセンターCRM企業であることを紹介した後、銀行を取り巻く環境が変化する中で、デバイスとSNSが新しい金融マーケティングの可能性を開くと述べた。

同氏は、スマートフォンのアプリが企業と顧客の新しい総合コンタクトポイントになっているとして、各社のアプリの活用事例を報告。スマートフォンに特化したカスタマーサポートの重要性にも言及した。

また、各社のソーシャルメディアの活用が4つに分類され、それぞれ異なるROIを設定していることを説明、Facebookについてネクスティア生命保険の活用実例と、海外の証券会社の活用事例を紹介した。

その後、良いFacebookとは何か、ファンに響く投稿やファンとのコミュニケーションポイント、ソーシャルメディアを活用した顧客リレーションのポイントについて解説した。
すべてのセッションが終了した後、懇親会を開催。多くの参加者で会場が埋め尽くされ、講演者や参加者同士で活発に意見交換する姿が見られた。なお、金融フォーラムの次回開催は2013年5月10日(金)に予定されている。
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