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アフターレポート

2013年5月10日(金)、株式会社セミナーインフォ主催により、東京・千代田区のベルサール神田で「金融フォーラム2013」が開催された。このフォーラムは、金融機関を対象に、業界を取り巻く環境の変化や規制の動向、成熟市場を生き抜くためのイノベーション等に関する付加価値の高い情報を提供することを目的に開かれる情報イベントである。昨年に引き続き、2回目が開かれた。

今回は、「金融機関の規制対応強化とマーケティング・イノベーション」を統一テーマに、全21セッションが開かれた。参加エントリー総数は約二千八百件で、各セッション会場では、講師の話に熱心に耳を傾け、メモを取るたくさんの受講者の姿が見られた。

フォーラムでは、まず基調講演として、金融庁監督局参事官の小野尚氏が登壇。「金融監督行政を巡る諸課題と今後の展望」と題して、最近の金融行政の動向と課題について解説した。これを受けて、セミナー会場A・B・C・Dでは、Legal & Regulation、Risk Management、IT & Cloud service、Marketingの4テーマについて、20のセッションが行われた。

保険フォーラム2011

金融庁による基調講演

当日、まずは「金融監督行政を巡る諸課題と今後の展望」と題して金融庁監督局参事官 小野尚氏が基調講演を行なった。

小野氏は、まず金融庁の当面の課題として、「欧州債務問題(ソブリンリスクの負の連鎖)への対応」「金融面からのデフレ脱却支援」「中小企業金融円滑化法の期限到来後の対応について」「金融行政の質的向上に向けた取組み」の4つを挙げた。

次に、中小企業金融円滑化法の期限到来後の総合的な対策について詳しく説明。円滑化法終了後に対応する体制として「中小企業金融等のモニタリングに係る副大臣会合」を設置するとともに、金融機関による円滑な資金供給を促進。

また、中小企業・小規模事業者に対する経営支援の強化として、全国の認定支援機関(税理士、弁護士等)が計画策定を支援すること、全都道府県に中小企業支援ネットワークを構築することなどを説明した。

また、企業再生支援機構から改組された地域経済活性化支援機構の主な機能と役割について述べ、地域活性化ファンドを活用するスキームを示し、その事例として駅前・商店街の再開発に関与する企業、複数の温泉旅館を一体的に再生する企業などの事例を紹介した。

最後に、金融審議会「金融システム安定等に資する銀行規制等の在り方」の報告書の概要について説明。銀行ワーキンググループの主な検討項目や、金融機関の実効的な破綻処理の枠組みの主要な特性(FSB)に対して、我が国の現行制度がどうなっているかを示した。

また、今後の対応として、金融商品取引法等の一部を改正する法律案の概要を説明。インサイダー取引規制の強化、AIJ事案を踏まえた資産運用規制の見直し、投資法人の資金調達・資本政策手段の多様化等に言及した。また、金融機関の秩序ある処理の枠組みの整備や銀行等による議決権保有規制(いわゆる5%ルール)の見直し、外国銀行支店に対する規制の見直し、大口信用供与等規制の見直しについても説明した。 保険フォーラム2011 風景4

金融庁・小野氏による基調講演の模様は、サブ会場でもライブ中継された

本邦金融機関が留意すべき金融規制改革

基調講演に続いて、4つのセミナー会場で各セッションが開かれた。会場Aでは「本邦金融機関が留意すべき金融規制改革」と題して、新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 プリンシパル 和合谷與志雄氏、金融アドバイザリー部 エグゼクティブディレクター 小石原英勝氏が報告した。

まず、世界的な金融規制改革の動向として、2013年2月15・16日に開かれたG20財務大臣・中央銀行総裁会議の合意内容に触れた後、グローバルな規制改革の課題とスケジュールを確認。日本の国際的な潮流への対応として、金融機関の秩序ある処理の枠組みの整理、外国銀行支店に対する規制の見直し、大口信用供与等規制の見直しについて報告。我が国金融業の更なる機能強化や規制当局のスタンスについて述べた。

次に、金融規制改革の動向と邦銀への影響として、システム上重要な金融機関への対応について詳しく解説。バーゼルV規制における自己資本比率、CRDW導入に向けた金融機関の課題、流動性規制導入に向けた金融機関の課題についても述べた。最後に外国金融機関に対するFRBの監督規制強化策についても言及した。

経営に資する内部監査態勢整備に向けての課題

会場Aでは続いて、「経営に資する内部監査態勢整備に向けての課題」と題して、新日本有限責任監査法人 金融アドバイザリー部 シニアマネージャー 大河原耕志氏が報告した。

内部監査機能について、内部統制から経営レベルの戦略、意思決定への分野への貢献まで、期待される範囲が拡大していると指摘した後、経営と内部監査の関わりを説明し、Ernst & Young内部監査グローバル・サーベイを基に、現状の課題認識について解説。

高度な内部監査部門のあるべき姿や、アシュアランス業務とコンサルティング業務の最適バランスの追求、期待ギャップの分析、内部監査部門とビジネス戦略との関連付け、内部監査部門の貢献度評価基準の設定について述べ、内部監査部門の評価指標の設定例も示した。

次に、内部監査部門高度化のための個別論点として、監査ユニバースと監査対象、フォワードルッキングな監査について述べ、環境変化に、よりダイナミックに対応する監査計画策定のプロセス例を紹介。グループの監査体制と実現に伴う整備事項、求められる基礎的なスキル例やリソース・マネジメントのプログラム例も説明した。最後に、監査計画における考慮点として監査についてのトピックスにも触れた。

アジアにおける金融取引と法規制

続いて、「アジアにおける金融取引と法規制 〜東南アジアにおける法規制を中心に〜 」と題して、アンダーソン・毛利・友常法律事務所 パートナー 弁護士 花水康氏が、主に東南アジアにおける法規制について報告した。

まず、貸付等に適用される各種規制として、インドネシア、ミャンマー、ベトナム、タイの国内における金融業務を規制する法律を紹介。また、外国為替・海外送金・外貨建て預金・私法上の取引・担保の設定など国外からの貸付等に適用される規制について説明。その後、インドネシア、ミャンマー、タイなど各国の規制について詳しく解説した。

次に、担保権の準拠法、法体系と担保権について説明。インドネシア、ミャンマー、ベトナム、タイについて、それぞれの国の担保権の設定方法について解説。最後に、債権譲渡の準拠法について全体的な状況を説明した後、インドネシア、ベトナム、タイについての債権譲渡の方法を詳しく説明した。

データ・ガバナンスの強化とトップダウン経営

続いて、「データ・ガバナンスの強化とトップダウン経営」と題して、有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ パートナー 桑原大祐氏、マネジャー 重本武史氏が報告した。

最初に桑原氏が、リスクを実効的に管理するには、社内の縦方向と水平方向のコミュニケーションとともに、社外のステーク・フォルダーとのコミュニケーションが重要であることを述べ、その後、バーゼル銀行監督委員会による「実効的なリスクデータ集計とリスク報告に関する諸原則」を基に、包括的なガバナンスとインフラ、リスクデータ集約能力、リスク報告実務の原則について説明。特にリスク報告における論点がどのようなものかを説明した。

次に、重本氏が、集約されたデータに基づく戦略的コミュニケーションの具体例として、欧州で導入が進んでいるコーポレートバンキングロースエンジン(CBGE)を紹介。その仕組みと営業担当者の意見を反映させる具体例について説明し、CBGEにより潜在的な収益拡大余地が数値化されることを述べ、営業担当者向けのアウトプットのサンプルを紹介した。

金融機関における反社・マネーローンダリング対策

会場Aの最後のセッションでは、「金融機関における反社・マネーローンダリング対策」と題して、弁護士法人中央総合法律事務所 アソシエイト弁護士 植村公彦氏、アソシエイト弁護士 中村健三氏が報告した。

両氏は、平成25年4月1日より本格施行を迎えた改正犯罪収益移転防止法について、実務上想定される悩ましいポイントを挙げ、パブリックコメントや金融庁ガイドラインなどを踏まえて解説した。

まず、取引時に確認を要する顧客管理事項の追加について、たとえば、職業・事業内容の確認では、「その他( )」欄については、かっこ内に具体的職業を記載する必要があり、複数の職業を有する者はそのすべてを確認する必要がある、勤務先の名称等から職業が明らかである場合を除き、勤務先の名称をもって職業の確認に替えることは不可、といった具体的な留意点を挙げた。また、実質的支配者の確認、確認義務の例外についても説明した。

その他、ハイリスク取引における確認、委任関係等の確認、確認済の顧客等との取引、経過措置について解説。最後に、情報を最新内容に保つための措置等(犯收法10条)についても留意すべきポイントを挙げて説明した。 保険フォーラム2011 風景4

バーゼルV流動性規制対応

基調講演に続いて、会場BでもRisk managementに関する5つのセッションが開かれた。まず「バーゼルV流動性規制対応」と題して、新日鉄住金ソリューションズ株式会社 金融ソリューション事業本部 ソリューション企画推進部 ソリューション企画推進グループ グループリーダー 坪野松勇二氏により、求められる対応とシステム化の課題についての報告が行われた。

坪野松氏は、まず、これまでの規制の流れと銀行の対応状況を説明。銀行の規模や海外展開等により取り組みレベルに差があること、対応のスタート時期としては、システム構築期間に1年、試行期間に半年から1年かかることを述べた。

次に、LCR、NSR、モニタリング指標について規制の概要を説明し、システム化に向けての課題として、対象データのタスク・手順のイメージ(LCR、国際統一基準行の想定)、報告サイクル(算出頻度・報告頻度)、安定預金やリスクアセット算出との整合性、キャッシュフロー生成について整理した。

その後で、同社が提案する流動性規制対応パッケージソフトを紹介。
特徴やメリット、システムの概要について説明した。

各国当局の規制強化を睨んだ、リスクデータとモデルリスク統制のあり方

この後、「各国当局の規制強化を睨んだ、リスクデータとモデルリスク統制のあり方について」と題して、オラクル フィナンシャルサービス ソフトウェア アナリティック・アプリケーション・セールスコンサルタント ディレクター 工藤善也氏による報告が行われた。

工藤氏は、まず、バーゼル委員会のリスクデータの諸原則のインパクトや米FRBのCapPRのCCAR(包括的資本分析)、新たな規制や制度が求める情報について解説。その上で、リスク管理と財務/管理会計のデータ統合は十分に可能であるとして、海外金融機関での取り組みの事例を紹介した。

次に、欧米の金融機関では、金融危機と同時に起こった社内外の不正、不祥事、あるいは犯罪の再発防止がリスクデータ整備の隠れた理由になっていると説明。ディーリングやブローカレッジ業務の社内外の不正検知と、財務系リスク管理領域を統合した事例を紹介した。

最後に、収益管理や顧客分析といったトップラインを引き上げる取り組みに、リスクデータをどのように生かし、出店を含む広義のチャネル戦略や商品やプライシングの戦略を打ち立てていくかの競争が始まっているとして、顧客別・チャネル別の収益分析を目指す取り組みを紹介した。

最近の金融税制の動向と金融機関におけるグローバルタックスマネジメント

続いて、「最近の金融税制の動向と金融機関におけるグローバルタックスマネジメント」と題して、新日本アーンスト アンド ヤング税理士法人 パートナー 須藤一郎氏とエグゼクティブディレクター 北村豊氏が報告した。

最初に、日本版ISA(少額株式投資非課税制度)の拡充により、リテール販売チャネルが変化する可能性があり、金融所得課税の一体化の推進で、金融取引のアレンジャーとしての新しいビジネスチャンスが生まれると述べた。一方で、税務調査実務の変化と金融取引に関する税務争訟の増加についても触れ、納得できない課税処分に対する対応上の留意点も説明した。

次に、金融規制上の重要課題と税務との相互関連性やEU金融取引税の影響、税務との相互関連性の例を取り上げた。また、最近のOECDにおける議論として、課税ベースの侵食・利益移転や受益者の範囲、税引き後ヘッジ取引、恒久的施設をめぐる論点などについて説明。

最後に、執行の強化や立法への対応としてタックス・ガバナンスの必要性や方向性、金融機関におけるグローバルタックスマネジメントとして体制確立のステップ例も示した。

モバイルサービスを駆使した回収戦略のベストプラクティス

この後、「モバイルサービスを駆使した回収戦略のベストプラクティス 〜自動音声メッセージとSMSによる顧客コンタクト率の劇的な改善〜」と題して、フェア・アイザック日本支社 シニアコンサルタント 阿部章裕氏が自動音声メッセージとSMSによる顧客コンタクト率の劇的な改善について報告した。

阿部氏は、海外で普及しているFICO® Adeptra ®モバイルサービスを紹介。顧客の状況を踏まえた繰り返しの連絡や、メッセージをいち早く伝える業務に多数の実績があること、特に延滞連絡や不正利用確認、顧客サービス・マーケティングに利用されており、すぐに利用できるベストプラクティスを提供できることを述べた。

その後、回収戦略における活用事例やFICO® Adeptra®回収モジュール、いくつかのサンプルケースを紹介。米国や英国のトップ5銀行がFICO® Adeptra®により効果を上げていることを示し、スマートフォンアプリを活用した不正対策例や口座開設時の追加書類提出依頼、電子メールによる案内の事例を紹介した。グローバルバンクや公益企業の課題解決の事例を紹介し、その導入効果をアピールした。

規制対応をチャンスに変える

会場Bの最後のセッションは、「規制対応をチャンスに変える〜グローバル調査が示すリスク・アナリティクス時代の到来〜」と題して、アクセンチュア株式会社 経営コンサルティング本部 リスク管理グループ マネジング・ディレクター 山本晋五氏が報告した。

山本氏は、まず、アクセンチュア株式会社が2012年に行ったグローバル調査からサマリーを紹介。全体傾向として、過半数の企業が、リスク・アナリティクスが意思決定の質を大きく高めると回答し、今後2年間のリスク・アナリティクスへの投資の対象領域として、データ品質向上、システム統合、モデリングが上位にきていることを紹介した。

次に、銀行業界へのクレジットリスク・アナリティクスに着目した調査結果について報告。大半の回答者は、十二分なデータ品質の欠如を課題認識しており、また、戦略的マネジメント判断にリスク・アナリティクスを今後展開しようとしていると解説。

今後取り組むべき事項として、経営判断に直結する事実・予測を導くデータの品質向上、全社・全行を把握できるシステムの統合、アナリティクス視点での経営判断を促すリスク・アナリティクス人材及び組織の強化であると述べた。 保険フォーラム2011 風景4

リテールビジネスの潮流とその変革を支えるクラウドプラットフォーム

基調講演に続いて、会場Cでは、IT & Cloud serviceに関する5つのセッションが行われた。まず、「リテールビジネスの潮流とその変革を支えるクラウドプラットフォーム」と題してプライスウォーターハウスクーパース株式会社 金融サービス事業部 マネージャー 陀安信法氏、マネージャー 斎藤吉宏氏が報告した。

最初に、現在のリテール金融市場について、各金融機関が利用者をしっかりと囲い込んだ上で、外貨預金や投資信託、保険などの金融商品を売り込み、クロスセルを推進していることを指摘。高齢者向け優遇サービスや住宅ローン、ダイレクトチャネルの推進についてそれぞれ解説した。

また、これからのリテール金融市場での競争は一層熾烈になると予想。企業の借入需要や家計金融資産が伸び悩み、住宅ローンも縮小し、金融資産を持った人の非都市部から都市部へ継続的流出など、市場の見通しを述べた。

そして、これからのリテール金融市場の戦略として、高齢者対応、既存顧客の離反防止、情報活用の推進、店舗を核としたマルチチャネル戦略についての考察を紹介。ユーザ部主導で導入でき、スピードと変化対応力に優れたクラウドプラットフォームの活用が進むとして、同社のクラウドプラットフォームの概要を紹介し、CRMデモンストレーションを行った。

ビッグデータ活用による信用リスク管理の新しいアプローチ

続いて、日本ヒューレット・パッカード株式会社 エンタープライズサービス事業統括 金融事業本部 コンサルタント 安田圭吾氏が「ビッグデータ活用による信用リスク管理の新しいアプローチ 〜市場コンセンサスの日次把握および債務者劣化の予兆検知にむけて〜」と題して報告した。

安田氏は、デリバティブ取引のカウンターパーティや保有社債の発行体など、取引関係を通じた情報の入手が難しいケースについて、従来の財務諸表分析に加えて新たなアプローチの必要性を述べ、直近ベースでの市場評価の把握や、各種指標のデータ分析による異常値の検索にビッグデータを活用できると説明した。

通信社や出版社などの配信記事やツイッター、ブログ、SNSなど構造化が難しいデータの概念検索・分析・可視化について触れ、クローリング手法や概念検索のメリットや注意点について解説した。次に、CDS市場を例に複数指標の相関分析、予兆見地に向けての異常値検索について説明。指標検索と概念検索の総合効果が、予知検知に繋がる第一歩になると述べ、実務運営にあたっての留意点についても説明した。

決済ビジネスの変革

この後、「決済ビジネスの変革〜地殻変動を起こすSettlementとPayment〜」と題して、株式会社NTTデータ経営研究所 金融コンサルティング本部 アソシエイトパートナー 桑島八郎氏が報告した。

桑島氏は、始めに、新興国の成長により従来のコルレス方式では国際小口決済のニーズに応えられなくなり、地域連携等による新たなスキームが出現していることを説明。欧州決済改革(SEPA)の伝播による変化の経緯を解説した。

次に、アジアの動向について、ASEAN諸国の経済的な結びつきの強まりを受けて設立されたAPN(Asian Payment Network)について詳しく解説した。APNの参加者は、各国のスィッチング事業者であり、直接的な契約の当事者であること、銀行は国内ATMスキームの所有者や為替取引の当事者として参加していることを説明。APNのサービス事例も紹介した。最近の動向にも触れ、将来的にAPNが担う役割が増大し、APNに関与することは、アジア決済ビジネスやグローバルリテールの足がかりとなると述べた。

金融機関におけるIT統制の実態と改善策

続いて、エンカレッジ・テクノロジ株式会社 マーケティング部長 日置喜晴氏が「金融機関におけるIT統制の実態と改善策〜なぜシステム管理者の不正行為はなくならないのか?〜」と題して報告した。

日置氏は、まずシステム管理業務における不正事件の特徴を説明。システム管理業務に必要な特権IDにはリスクが伴うため、プログラムの開発とITシステム運用の組織と権限を分離し、牽制効果を機能させることが重要であると述べた。次に、最近のシステム管理業務で起きた事件・事故の原因を振り返り、不正防止のためのIT統制強化策を紹介。

また、顧客調査をもとに、開発と運用の組織と権限の分離、本番システムへのアクセス内容の妥当性判断、操作証跡を利用した点検の3つの課題を挙げた。次に、不正防止に効果のある対策ポイントを説明し、課題はコストと残存リスクにあると述べた。最後に同社が提供しているSIOソリューションを紹介しながらその特長を解説し、リスク管理強化と効率化が図れることを強調。委託先に対するSIOの活用についても説明した。

【実践編】戦略業務系クラウドサービスによる営業力(量×質)強化

会場Cの最後のセッションは、「【実践編】戦略業務系クラウドサービスによる営業力(量×質)強化 〜営業時間25%アップとEBM活用による営業スキルアップ〜」と題して、フューチャーアーキテクト株式会社 金融&ソリューショングループ エグゼクティブマネジャー 渡邉浩史氏が報告した。

まず、マーケットが縮小し、競争が激化して利鞘も縮小する中で、金融機関はこれまでの延長では収益は向上せず、抜本的な改革による優位性の確立が急務であることを指摘。中小企業から見ると、事業拡大に向けた設備投資資金のニーズは、金融機関が考えているより高く、お客様を“深く知る”ことを中心に据えた業務プロセスが重要だと述べる一方、営業現場では、営業の検証と改善のサイクルを“仕組化”することが必要であることを述べた。

その上で、同社が考える渉外・融資業務の取り組むべきテーマと解決の方向性(コンセプト)を提示。営業力強化の取り組みとして、同社が提供する戦略的システムプラットファーム・SKYBANK®についてデモンストレーションを交えて紹介し、導入の効果事例についても説明した。

消費者起点でのチャネル戦略

基調講演の後、会場Dでは、Marketingについて5つのセッションが行われた。最初に、「消費者起点でのチャネル戦略 〜カスタマーセントリックの本格到来に備えて〜」と題して、株式会社ローランド・ベルガー 取締役シニアパートナー 米田寿治氏が報告した。

米田氏は、モバイルやソーシャルメディアの急拡大で、コミュニケーションスタイルが多様化。自分のライフスタイルにこだわる消費者が増え、マス・マーケティング一辺倒は通用しないことを指摘。提供価値に基づいて顧客をセグメンテーションし、進化させていくことが重要であると述べた。

次に、提供価値ベースの分類を紹介。新たな顧客セグメントに対するチャネルの在り方が重要であるとして、海外の銀行の事例を紹介。Facebookを通じたバンキングサービスやBBVAの音声認識によるバーチャルな顧客対応、IKEAのビジネスモデルなどの事例も取り上げた。そして、将来の金融サービスのあるべき姿として、顧客起点(カスタマーセントリック)のビジネスモデルを提示。「既存の銀行だからこそできる」店舗誘導型のカスタマーセントリックなど、いくつかの提案を行った。 保険フォーラム2011 風景7

無担保ローンと保証ビジネスの現状と展望

続いて、「無担保ローンと保証ビジネスの現状と展望 〜銀行セクターの取り組みの活発化〜」と題して、株式会社日本格付研究所 金融格付部 チーフ・アナリスト 本多史裕氏が報告した。

本多氏は、まず無担保ローン市場について縮小傾向がようやく鈍化していることを、貸金業協会や銀行貸し出し(無担保ローン)統計の推移のグラフにより示した。

次に、大手貸金業者は、2012年度は全社とも黒字の公算が高いが、決算内容は様々であり、カード会社は利息返還から脱し、身軽に動きうる存在になっていると述べた。クレジットカード業務では、銀行系、独立系、流通系が勝者であることも示した。

次に、銀行セクターの取り組みが活発化している状況を説明。無担保ローン残高は減少から増加が顕著になり、大手行は必ずしも残高は伸びていないが小会社を活用していること、また、地方銀行の保証の活用と子会社化、ノンバンクの銀行提携、銀行化、インターネット企業の銀行形態の活用といった動きについて解説。

最後に、国内の無担保ローンのポジションと展望、国内の保証業務のポジションと展望を述べた。

マーケティングはなぜ機能しないのか?

この後、株式会社エム・セオリー 代表取締役 栃本克之氏が、「マーケティングはなぜ機能しないのか? 〜金融機関におけるセグメンテーションの役割〜」と題して報告した。

栃本氏は、マーケティングが機能しない理由の根本原因は、セグメンテーションの不在にあると指摘。セグメンテーション「軸」の抽出のために、@セグメント候補の抽出、Aセグメント軸の差の大きさ定量化、Bセグメント軸の集約化、Cセグメント軸の優先順位付けというステップを紹介。複合商業施設を例に各ステップの解説を行った。

次に、戦略立案ステップとして、@セグメントのマクロ・ポテンシャルの算出、A攻略実効性の把握と資源配分の基盤、B攻略実効性の担保、Cセグメントの優先順位の確認、攻略順序の決定について説明。競合のカウンター・アタックとセグメンテーションにも言及した。

最後に、マーケティング機能の全体像や、セグメンテーションにおけるビックデータ活用例、金融サービス特有の課題についても説明した。

金融リテールビジネスにおけるクロスセリング

続いて、アクセンチュア株式会社 金融サービス本部 銀行グループ担当 マネジング・ディレクター 宮良浩二氏が、「金融リテールビジネスにおけるクロスセリング 〜ディストリビューション改革がもたらすインパクト〜」と題して報告した。

はじめに、宮良氏は、「国内金融市場の成熟」「社会構造の変化」「経営改善の限界」が相まって、銀行経営をとりまく環境は、潮目が変わる時期であり、金融リテールビジネスの舵取りを困難にしていると述べ、シェア獲得競争に勝利するための5つのチャレンジが存在すると述べた。

次に、シェア獲得競争に対する一貫した打ち手として、@商品革新(プロダクトバンドリング加速)、A営業革新(顧客理解に基づくクロスセル)、Bオペレーション革新(ロケーションフリー・オペレーション)、Cチャネル革新(一貫したマルチチャネル体験)、DIT革新(銀行システムの製販分離の5つを挙げ、それぞれ事例を挙げて説明。

最後に、まとめとして、事例から得られる示唆と今後取り組むべき事項を示した。

ビッグデータがもたらす金融マーケティングの新潮流

会場Dの最後のセッションでは、有限責任監査法人トーマツ 金融インダストリーグループ シニアマネジャー 服部邦洋氏、マネジャー 飯塚香氏が、「ビッグデータがもたらす金融マーケティングの新潮流」と題して報告した。

まず、飯塚氏が、マーケティングは、将来のキャッシュフロー創造に向けた投資活動であることを説明。金融マーケティングが、顧客との関係性の中で個別ニーズベースの商品やサービス提案するDialogue Marketingという新たなステージに入っていることを述べた。また、ビッグデータの分析は、あくまで戦略意思決定をしやすくするためのツールであるとも指摘した。

次に、服部氏が、トーマツのデータ分析サービスを紹介。将来のキャッシュフローを最大化する可能性のある顧客に向けたマーケティング活動(セグメンテーション)が大切であるとして、その事例を紹介。大手銀行のデータマイニングの結果から、クラスター別のマーケティングプランについて解説。最後に、戦略的マーケティング組織になることの必要性を述べた。


すべてのセッションが終了した後、懇親会を開催。多くの参加者で会場が埋め尽くされ、講演者や参加者同士で活発に意見交換する姿が見られた。なお、金融フォーラムの次回開催は2014年4月23日(水)に予定されている。 保険フォーラム2011 風景6
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